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東北地方初の導入となるロボットを用いた心臓手術(僧帽弁形成術)を実施

今回、岩手医科大学附属病院心臓血管外科において東北地方では初の導入となるロボット(ダビンチシステム)を用いたロボット支援下僧帽弁形成術(以下:ロボット手術)を10例行いました。本術式が心臓手術における治療選択の1つ方法あることを広く岩手県民に周知していただくことを目的にてご報告させていただきます。
今回の手術を行う病気の対象は僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)となります。この病気は心臓の中にある4つの弁の1つである僧帽弁が何らかの理由で上手く機能せず逆流が起きてしまい、これにより患者さんの症状として疲れやすい、すぐに息が切れる、あるいは不整脈などが症状として現れます。病気が進行した場合、症状の悪化した心不全状態となり入院加療が必要となります。薬剤での治療が困難な場合、あるいは逆流の程度がひどい場合には手術を行う必要があります。
心臓外科手術を行う場合、手術の方法としては、悪くなった弁を修理して治す弁形成術(べんけいせいじゅつ)と悪くなった弁を取り除き人工の弁に入れ替える弁置換術(べんちかんじゅつ)があります。今回のロボット手術は形成術にのみ行える方法となっています。
通常心臓手術は、胸骨正中切開という胸の真ん中を縦方向に切開して心臓を露出する方法が一般的なアプローチ方法です。一方、ロボット手術は右側の胸に約6㎝のキズを開け、そこから心臓にアプローチし、その傷の周囲からロボットのアームを挿入し、術者はロボットから映し出られる画像を見ながら手術を行う方法です。
この術式を行うには、まず、先ほどの小さいキズから直接、弁を観察しながら行うミックス手術というものを経験し、十分な実績や成績を残した術者、施設において学会で指定されたトレーニング等を行った後、導入においては最初の3例は指導医を招聘し手術を行うことになります。
患者側へのメリットとして直接胸骨という骨を切らないことで、術後早期のリハビリ介入、出血量の低下など、また、従来の大きな傷に比べ小さな傷による美容的な効果も期待されるところです。また、医師側においては、ロボットを用いることで、これまで肉眼で直接見ていた弁の状態がカメラを介してより鮮明に確認できる点、また、限られたキズのスペースからでは手術器具を十分に用いることが難しいなど、手術器具の可動性の制限がありました。一方、ロボットの場合、そうした可動性の制限は基本的になく、その困難さを克服することができ、また緻密な操作が可能になるなどのメリットがあると考えられます。
こうした術式が行えるようになったことで、患者さんにおいては、僧帽弁閉鎖不全症における新たな手術方法を選択できる可能性が生まれと言えます。また、岩手県のみならず東北地方においても患者さんの高齢化が進む中、少しでも手術による体へのストレスを軽減できる術式を導入したことで、早期社会復帰また早期退院による医療費の軽減なども期待できると考えています。