口腔医学講座 [予防歯科学分野]
すべてのライフステージを通じて、口腔の健康はよりよい生活の質(QOL)のみなもとです。予防歯科学分野では、子どもから高齢者、全身疾患の治療前後、さらには大規模災害後など、人生のあらゆる状況において口腔の健康の維持、増進に寄与するよう、齲蝕、歯周病、口臭、がん治療の副作用による口腔粘膜炎などの予防に取り組んでいます。
講座?教室からひとこと
2025年には日本人の30%以上が65歳以上の高齢者になると推定されています。そのような超高齢社会では生涯を通した口腔の健康がこれまで以上に重要であると考えられています。たとえば高齢者の口腔機能が低下すると食事をとりにくくなり、低体重、ひいては虚弱の原因となります。また、口腔内が不潔だと誤嚥性肺炎を惹起します。さらに、がんなどの治療で用いられる放射線療法や化学療法は、歯科疾患の悪化や口腔粘膜の重篤な炎症を生じさせ、口腔の不潔は術後の呼吸疾患の原因になると考えられています。一方、2011年に発生した東日本大震災の被災地では震災後4年以上経過しても復興途上であり、いまでも仮設住宅で暮らしている住民が少なくありません。そのような生活環境は口腔や全身の健康状態に影響を及ぼすと考えられます。ここ数十年で小児の齲蝕と高齢期の歯の喪失はめざましく減少しました。しかし、超高齢社会の到来、全身疾患治療の高度化、大規模災害の頻発などの社会変化に伴い、歯科保健医療に対する新たなニーズが数多く現れています。同時に「歯科口腔保健の推進に関する法律」(歯科口腔保健法)の成立に代表されるように、歯科保健医療をとりまく法や制度も大きく変化しています。このような時代の要請に対応すべく、我々は、臨床、研究、教育に取り組んでいます。具体的には臨床では医科各科から依頼を受けた周術期の口腔管理を歯科衛生士と連携して行っています。また歯科疾患安定期のメインテナンスと口臭外来も担当しています。研究では周術期の効果的な口腔ケアに関する研究や被災地でのフィールド研究などを行い、教育では、衛生?公衆衛生学、社会歯科学と臨床教育コースのDTPを担当し、広く社会を見渡せる目を持った次世代の歯科医師の育成を目指しています。
講座?教室の基本理念
歯科医師法第1章第1条「歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」とあるように、歯科医師は単に歯科疾患の治療を行うだけでなく、疾病予防、公衆衛生活動により国民の健康に寄与しなければならない。そのための歯科保健、医療の提供と歯科医師の養成を行うべく、臨床、教育、研究を行うことを当分野の基本理念とする。
主な研究内容および診療内容
<研究内容>
- 被災地住民の口腔内状況と口腔関連QOLに関する研究
- 被災値住民の口腔粘膜疾患の発症に関する研究(口腔外科との共同研究)
- 周術期の口腔粘膜炎の関連要因と予防法に関する研究
- 口腔微生物と口臭ならびに口腔内状況に関する研究
- 歯質の脱灰?再石灰化機構に関する研究
<診療内容>
- 周術期の口腔管理と口腔粘膜炎予防
- 歯周病安定期患者の定期口腔管理
- 口臭外来