平成20年度卒業式式辞
本日ここに、岩手医科大学、大学院学位記授与式、並びに、医学部、歯学部卒業証書?学位記授与式を挙行できますことは本学にとりまして誠に大きな喜びであります。
只今、学位記をお渡しした27名の新博士?修士の諸君に、そして卒業証書をお渡しした医学部82名、歯学部64名の卒業生諸君に、心からお祝いを申し上げます。
諸君が今日あるのは、ひとえに今日まで温かく支援し、見守って来て下さったご父母、ご親族の皆様の絶大なるご協力があってのことであります。その意味では 諸君の人生において最大の親孝行をした日となったのではないかと思います。ご父母またご親族の皆様には、さぞやお慶びのことと心よりお祝い申し上げます。 また、今日までご指導下さいました教職員各位に対して、深く感謝の意を表します。
初めに、大学院において博士課程、修士課程を修了し、学位を取得された新博士?修士の諸君に申し上げます。
大学院は本邦の最高学府の中の最上位に位置するものであり、学位の称号は、学問の深奥を極めた人にのみ授与される価値あるものであります。しかし、これ で研究が終わったのではありません。むしろ、生涯続くこれからの研究の新しいスタートラインについたというべきでしょう。
これからは自ら医療の現場から問題点を抽出し、研究を組み立ててゆくことが求められます。また、諸君は研究指導者としての能力を認められたということでも あり、今後は後輩に対して、厳しい指導をお願いいたしたいと思います。そして、新博士?修士諸君には、更なる研鑽を重ね、真摯な学者として医?歯学、医療 の発展のため一層のご努力をされ人類の福祉に大いに貢献されることを切に望みます。
次に医学部、歯学部の学部卒業生の諸君に申し上げます。
卒業、誠におめでとう。
今、諸君の輝かしい未来に羽ばたかんとする姿は、凛々しく、頼もしさを感じます。諸君は学生生活の中で様々な経験を経てこのように大きく成長し、生涯の友 を得、そして数々の思い出を残して本日卒業されるのであります。卒業は、長い人生において大きな節目の日であり、新たな出発への強い決意をもっていただき たいと思います。 医師、歯科医師となる学部卒業生諸君に二つのことを申し述べたいと思います。
第一には、「深い人間性を持った良識ある医療人たれ。」ということであります。 医療職は人を対象とする聖職であり、高い人間性と倫理性を持つことが求められています。本日いま一度、「医療人たる前に誠の人間たれ。」という本学の建 学の精神を思い起こしていただきたいと思います。これこそが医療人の基本であります。病める人の視点に立ち、謙虚で、人間性豊かな、医師、歯科医師として 厚生済民に尽くしていただきたいと思います。
第二には、「生涯学習を通じ常に己を向上させる医療人たれ」ということであります。医?歯学、医療の進歩発展はめざましく、日々の進歩とともに変わって行 きます。医療人として常に向上を図り、生涯にわたり学習することが「有能な良医」たる条件であり、生涯学習なしには「良医」であり続けることは出来ないこ とを認識して頂きたいと思います。
「誠の人間たれ」の意味は「病める人を思う心を持った医療者たれ」と言うことであり、これに加えて、「最新の医療技術の修得と知識の更新」がなければ良質な医療を施すことはできません。
さて、本学の源は三田俊次郎先生によって明治三十年に創設された医学講習所にさかのぼることができます。以来百十二年の歴史の中、幾多の存亡の危機を乗り 越えて、東北以北唯一の私立医科大学として発展してまいりました。この長い歴史には多くの同窓生各位、教職員の結束と連帯、母校に対する献身的支援あって のことであり、先人のご労苦があってこそ今日私どもが学ぶことが出来、諸君の今日があるということを忘れてはなりません。
諸君は、本日、この輝かしい歴史を有する同窓の一員となりました。今後は後輩にこの歴史を引き継いでゆく責務を負ったのだという自覚を強くもって頂くことを切望します。
また、国の政策変更により、念願の医学部の入学定員増が実現しました。これを受け、大堀理事長統理のもとで進捗している総合移転整備計画の一環として学 部、講義実習棟の新設に着手することとしております。そして、医学部、歯学部そして薬学部を有する医療系総合大学の特色を生かし、世界をみすえた大学の発 展と飛躍を目指してまいります。諸君は、発展を遂げつつある母校を誇りに思い、その誇りを糧に世界へ羽ばたいて頂くことを切に希望します。
おわりに、医師、歯科医師に対する社会の期待は非常に大きいものがあります。 諸君には、各分野、各地方で立派なご業績をあげている諸先輩と共に活躍され、社会に貢献し、引いては母校岩手医科大学に光を当てる人材になって頂くことを切に祈念して式辞といたします。