令和3年度入学式式辞
岩手医科大学医学部?歯学部?薬学部?看護学部に入学の新入生諸君301名、大学院修士課程?博士課程入学の50名の 諸君、今日の日を迎えられ、誠におめでとうございます。そして、新入生諸君のご両親、ご親族の皆様方のお喜びはいかばかりかと推察いたします。誠におめでとうございます。
昨年から続いている新型コロナウイルス感染症の大流行で、昨年は3月の卒業式と4月の入学式を中止せざるを得ませんでした。先月の卒業式は矢巾キャンパスの大堀記念講堂で挙行しました。このときは卒業生代表の諸君に出席いただき、そのほかの大多数の卒業生諸君とご両親、ご親族の皆様方にはウェブでご視聴いただくこととしました。今日、本当に久しぶりに新入生諸君全員に出席いただいて、この岩手県民会館で入学式を挙行しています。それでもご両親、ご親族の皆様方にはウェブでご視聴いただいています。
まず、医学部?歯学部?薬学部?看護学部に入学した諸君に申し上げます。本学は明治30年、創設者である三田俊次郎先生が、私立岩手病院と医学講習所をつくられたことに始まります。医学講習所というのは、いわゆる医師養成所です。ちょうどその頃、岩手の医療は荒廃し、悲惨な状況にあった時代でした。三田先生が素晴らしいのは、医師のみで医療は成立しないと考えて、産婆?看護婦養成所もつくられたことです。これは現在でいう助産師?看護師の学校です。つまり、このときから東北?北海道において、初のチーム医療がスタートしたことになります。
以後、さまざまな変遷を経ながら、本学はしばらくの間、医学部のみの単科大学として運営されてきました。そして昭和40年に東北?北海道で初となる歯学部が設置されました。さらに平成19年、矢巾キャンパスに薬学部を設置し、本学の創立120周年という節目の年にあたる平成29年には記念事業として、悲願であった看護学部を開設しました。そこからちょうど4年となる今年3月、看護学部第1回生が卒業し、現在では看護師?保健師?助産師として第一線で活躍するようになりました。これにより本学は、医?歯?薬?看の4学部を擁する医療系総合大学として再スタートできたのです。
本学の大きな特長は、医?歯?薬?看4学部の学生諸君が矢巾キャンパスという学部の壁のない環境の中、お互いに顔の見える関係で医学?医療を学ぶことができることです。つまり学生時代から、チーム医療の根幹を涵養できる非常に恵まれた環境にあります。諸君には多くの友達や仲間をつくり、そして諸君が将来、医療人として活躍するための基盤を本学での学生時代につくっていただきたいと思います。
本学は、地域医療とチーム医療でスタートしました。そして一昨年、矢巾に最新鋭機器を備えた、1000床規模の世界屈指の大病院を造りました。盛岡の内丸にあった旧附属病院は、内丸メディカルセンター?歯科医療センターとして機能させています。この二つで本学は、地域医療とチーム医療、さらに先進医療という三本柱で今後とも躍進していきます。新入生諸君は入学に際して、いろいろな分野の医療人になることを目指していると思います。諸君はこの環境の中で、まさに今、医療人という目標に向かう先輩たちを目にすることになります。また、諸君の教育にあたる先生方は、諸君がこれから歩むのと同じ道を歩んできた高度医療人の方々です。この方々の姿を、そして背中を見ながら、自分の将来の夢を育んでいただきたいと思います。
本学の創設者である三田先生は、「医療人たる前に誠の人間たれ」と言っておられます。この言葉は本学の学是となっています。「医療人である前に誠の人間になれ」という意味ですが、これは非常に難しい言葉です。諸君が今後、医療人としていろいろな面で力をつけていく段階において、そのときどきに「誠の人間」の意味合いは変わってくるかもしれません。また、そうでなければ諸君の進歩はないでしょう。諸君が卒業して医療人になったとき、訪ねて来られる患者さんとそのご家族は体を病み、それゆえに心も痛めておられます。そういう方々に接して、諸君はまず、病みと痛みを理解してあげて、その方々に寄り添うという心優しい医療人でなければなりません。学生時代に、このことを身に付けてください。その上で高度な医療人へと、さらに躍進していただきたいと思っています。
大学院に入学した諸君に申し上げます。諸君は医学?医療における真理を追究するという、まさにチャレンジ精神で入学してこられました。諸君の情熱?熱意と真摯な態度に敬意を表します。これから幾多の苦難があると思いますが、それを乗り越え、当初の目的を見事に果たしてください。同時に、諸君はこれから医学?医療における指導者となるわけですから、その意味での心構えもしていただきたいと思います。
全員に申し上げます。今日はまさに快晴で、桜も満開となりました。諸君の門出を祝福する、絶好の入学式日和です。この麗らかな春の日に、諸君は新たな人生をスタートすることとなりました。それぞれに夢を持っていることでしょう。その夢をぜひ花咲かせ、咲いたなら、次の新たな夢をつくる。つまり、夢の続きをつくってください。その花を一つひとつつないで、より大きな花にして、大輪の花を咲かせていただきたいと願っています。これから苦難に遭遇することもあるかもしれませんが、大いに精進して頑張っていただくことを祈念して式辞といたします。本日は誠におめでとうございました。
(令和3年4月16日 岩手県民会館)
岩手医科大学 学長 祖父江 憲治