小児歯科学?障害者歯科学(含 高度臨床歯科医育成コース)
学科目紹介
小児歯科学は、子どもの歯と歯並びを健全に育成して、永久歯にスムーズに交換させることによって、その子が成人したあとも長く自分の歯で食事を楽しむことができるようにする基礎づくりを行う役割を担っています。人生の初めにきれいな歯並びとむし歯のない口、そしてそれを自分でケアできる習慣を身に着けることができれば、その人の人生に大きなしあわせを与えることになるのです。小児歯科では子どもたちがいかに苦痛なく齲蝕の治療をうけることができるか、その前にどう子どもをむし歯から守るか、さらにどうすれば将来矯正治療を受けずに済ますことができるのかを考えます。
障害者歯科学は、知的あるいは身体、精神的障害によって通常設備の診療所において歯科医療を受けるのが難しい患者(いわゆる歯科的障害者)のために、医学?歯学の知識をひろく用いながら、歯科診療にいろいろ工夫を加えることにより、よりよい患者の口腔状態、ひいては全身状態を目指します。
主な研究内容
- 齲蝕にならない歯の強化法
歯質の耐酸性は齲蝕感受性を大きく左右します。むし歯にならない子の歯はとてもツルツルしていて光沢があり、タービンで削ろうと思ってもなかなか削れません。フロロアパタイトが多ければ多いほど歯は溶けにくくなります。結晶性の向上という観点からも、効果的な歯質の強化法を追究します。 - 齲蝕にならない細菌叢
むし歯にもっとも関連のある細菌は言うまでもなくミュータンス菌(MS)です。MSが伝播しにくい細菌叢とはどんな細菌叢なのでしょうか?他のどの細菌が一緒にいるとMSが増えにくくなるのでしょうか?レンサ球菌、歯周病原性細菌そのほか様々な細菌との相互作用を追究します。 - 小児の歯周病
歯周病を起こす細菌の感染はいつごろ起こるのでしょうか?齲蝕原性細菌のような母子伝播が起こるのでしょうか?成人になってからの歯周病を小児期からの対策で予防する方法を追究します。 - 小児のいびき?歯ぎしり
小児にもいびきや歯ぎしりをする子がいます。原因は様々ですが、睡眠時無呼吸や顎関節症、異常咬耗など将来成人になってからも問題となる症状の発端となっている可能性があります。このような病気の将来の予備軍が小児の中にどのくらいいるのか、またそれをいかに予防するかを追究します。 - 頭頸部の細胞の情報伝達について
障害がある人のモデルとして、マウス頭頸部の細胞(唾液腺あるいは神経節)興奮を解析し、病気のメカニズム解明の一助とします。
学生へのメッセージ
少子化の時代だからこそ小児を専門とする歯科医が求められるのだと思います。子どもが少ないということは、子どもを大切にそして健全に育てたいという親の気持ちが一人の子どもに寄せられる時代ということです。成人と同じ考え方、治療方針で治療する歯科医院と小児に特化した環境の中で、それぞれの年代の小児にもっともふさわしい対応、処置を行っていく小児歯科とどちらに大切な子どものお口の管理を任せようと親は思うでしょうか?今は人数が少なくて、一般に知られていない小児歯科専門医ですが、今後は欧米でそうであるように小児歯科の専門性が高く評価されるようになるに違いありません。
障害者歯科学は,障害がある人たちにも歯科疾患の治療と予防を行おうという学問です.本当は健常者と同じ治療を,同じ方法で出来ればいいのですが,まず同じ方法でできない場合が少なくありません.また同じ治療のゴールでは,患者に不適切な場合があります.そのようなことを患者一人一人について工夫していると,当たり前と思っていた治療の中に,考えてもみなかった意味が見いだせることもしばしばです.また障害者歯科学では治療と並行して行動管理や全身管理(全身麻酔を含む)が学べます.障害者歯科は大学でしか学べません。歯科医師になりたての一時期,障害者歯科学を通して自分を磨くのはよい経験になると思います.
- 問い合わせ先:口腔保健育成学講座 小児歯科学?障害者歯科学分野(内線4430) 熊谷 美保
mkumagai@iwate-med.ac.jp